Introduction: 手作りギターエフェクター Handcrafted Guitar Effector
電子部品をプリント基板に組み合わせて作るギターエフェクターです。基板加工機でプリント基板を作り、部品をはんだ付けするだけで作れます。今回はフェイザーという種類のエフェクターを作りました。
Step 1: 材料・道具の用意
プリント基板のデータ作成はEagleを使用しました(Ver.7.5.0)。また基板加工機はMITS Eleven autoを使いました。
部品の数が多いので、よく確認しながら揃えてください。
◯基板上の部品
・オペアンプIC:4個
型番に"4558"があるものを使ってください。
・FET:4個
かつてはエフェクターによく使われた2SK30Aという部品があったのですが、生産が終了してしまっているので、似た性質を持つ2SK246を使用しました。
・ツェナーダイオード(4.7V):1個
・固定抵抗器
47Ω:1個
2.2kΩ:1個
10kΩ:10個
22kΩ:4個
33kΩ:2個
100kΩ:6個
150kΩ:5個
470kΩ:1個
680kΩ:1個
1.5MΩ:1個
・電解コンデンサー(耐圧16V以上のもの)
4.7μF:1個
10μF:5個
・コンデンサー
0.047μF:4個
0.01μF:2個
・半固定抵抗器(100kΩ):1個
・可変抵抗器(ボリューム)
500kΩ Bカーブ:1個
1MΩ Bカーブ:1個
・ICソケット:4個
オペアンプICを取り付けるためのソケットです。
・ビア:18個
基板の表と裏を繋げるために使います。
◯基板外の部品
・フットスイッチ:1個
3PDT(3回路2接点)のオルタネート型フットスイッチを使ってください。
・ケース入りステレオジャック:2個
Φ6.3mmの標準プラグ用です。
・LED(好みの色・大きさ):1個
・電池スナップ:1個
・9V角型乾電池;1個
・ケース:1個
今回はタカチ電機工業の「TD9-12-4N TD型アルミダイキャストボックス」を使いました。
・ビスナット(M3):適宜
・スペーサー(M3):4個
・配線材:適宜
・熱収縮チューブ:適宜
◯道具
・はんだ付けのできる道具一式
・ドリルセット(2mm~7mmが揃っているとよい)
・ニッパー
・レンチ
・リーマー
・2液型のエポキシ系接着剤
・グルーガン
・ワイヤーストリッパー
・テスター
Step 2: データの用意
プリント基板のBoardデータとSchematicデータを用意したので、これを元にお使いの基板加工機に合わせてドリルデータなどの抽出を行ってください。
Attachments
Step 3: 基板の加工
加工し終わると写真のようになります。基板をネジ止めするための四隅の穴がうまく開いていなければ、ハンドドリル等で穴を開けてください。
Step 4: 基板へのはんだ付け
基板へ電子部品をはんだ付けすると写真のようになります。部品の数が多いので思ったより大変だと思います。テスター等で通電チェックをこまめに行いましょう。FET(半円形の部品)の向きには特に注意してください。細かい作業になるのでルーペや顕微鏡があると便利です。
Step 5: LEDの配線
LEDの足はあらかじめ短く切っておき、配線材と繋げてはんだ付けします(写真1)。
はんだ付けが終わったら熱収縮チューブをかぶせて絶縁します。ハンダゴテをの熱を当てればチューブが縮まります(写真2)。
最後にLEDのアノード(+)側に2.2kΩの抵抗をはんだ付けします(写真3)。
Step 6: ステレオジャックの配線
次に入出力となるステレオジャックの配線をします。ジャックは配線間違いがよく起こる部品なので気をつけて配線しましょう。今回使ったステレオジャックはピンが3つあります。ジャックにプラグを挿したとき、プラグのどの部分と繋がるかでピンの種類を判別します。プラグの先端(チップと言います)部分に繋がるピン・プラグの途中(スリーブと言います)に繋がるピン・アースの3つです。ピンをよく見て確認しましょう。
まずは出力となるジャックの配線をします。プラグのチップに繋がるピンに1本配線します。これはフットスイッチの5番ピン(sw5)と繋がります。次にプラグのスリーブに繋がるピンに2本配線します。1本は入力ジャックに(input)、もう1本は1MΩの可変抵抗の1番ピン(depth1)に繋がります。出力ではアースのピンは使いません。
次は入力ジャックです。プラグのチップに繋がるピンに1本配線します。これはフットスイッチの2番ピン(sw2)と繋がります。プラグのスリーブに繋がるピンには3本配線します。1本は出力ジャックに、1本はLEDのカソード(マイナス)に、1本は基板に繋がります。アースには電池スナップのマイナスに繋げるように1本繋げます。
はんだ付けで配線し終わったら、グルーガンでピンと配線材をしっかり固定しましょう。完成後の故障の原因で多いのがケーブルの断線で、特にピンとの接続部分は切れやすいので周りを接着して補強します。
Step 7: フットスイッチの配線
今回使うフットスイッチは3PDT(3回路2接点)という型のスイッチです。3回路という通り、スイッチの回路が3つ並んでいるようなピン配置になっています。スイッチを押すたびに中央の列のピン(2,5,8番)が隣り合う左右のピン(同じ色で示した番号のピン)のどちらと繋がるかが切り替わる仕組みです。テスターで通電を確かめてみるとよいでしょう。
まずスイッチの3番ピンと6番ピンを繋げます。スズメッキ線や抵抗の余ったリードなどを使って繋げてください。
次に他のピンに配線していきます。9番のピンは使いません。他のいろいろな部品と繋がるので間違えないように気をつけてください。
・1番ピン:基板へ(PCB)
・2番ピン:入力ジャックへ(input)
・4番ピン:基板へ(PCB)
・5番ピン:出力ジャックへ(output)
・7番ピン:電池スナップの+側(V+)と基板へ(PCB)
・8番ピン:LEDのアノード(+)側へ(led+)
基板へ接続する部分が3つもありますが、加工した基板のどの部分へ繋げるかは後述するのでとりあえずこちら側だけ繋げておいてください。
Step 8: 可変抵抗器(ボリューム)の配線
次は可変抵抗器の配線をしていきます。
まずdepthボリュームとなる1MΩの可変抵抗器から行います。1番のピンは出力ジャックへ繋がります。2番と3番のピンは一緒に繋げて基板へ配線しましょう。
次にrateボリュームとなる500kΩの可変抵抗器です。これは1番と2番のピンを一緒に繋げて基板へ繋げます。3番のピンは基板の別の場所に繋がります。
はんだ付けが終わったらグルーガンで接続部の固定も行ってください。
Step 9: 基板上の配線
今までの部品でPCBとだけ表記していた基板部分で、どの部分へ繋げればよいかを画像で示しています。Boardデータにも同じ名前で書いてあるので、見比べながら間違えないように配線してください。
Step 10: ケースの加工
配線周りが終わったので次はケースに穴を開けていきます。ケースのフタに基板をネジ止めし、その他の部品はケースの表面や側面に穴を開けてボルトで固定します。
ケースの表面に開ける穴と部品の対応は写真1の通りです。入力と出力ジャックは側面に実装します。
穴を開ける箇所が決まったらペンなどで印をつけます(写真2)。
印の位置にセンターポンチとハンマーを使ってくぼみをつけます(写真3)。これでドリルの刃を当てた時にズレにくくなります。
くぼみをつけたらドリルで穴を開けるのですが、いきなり目的の大きさを開けようとするのではなく、2mmのドリルで下穴を開けます。それから3mm、3.5mm、4mm…と徐々に大きなドリルに替えながら穴を大きくしていきます。
基板固定用のネジ穴やLED用の穴以外は5mmより穴の大きさが大きくなると思います。その場合はリーマーを使って少しづつ慎重に穴を拡大してください(写真5)。少し削ったら部品の現物を当てはめて、小さかったらまた削る…という作業を繰り返し、穴が大きくなり過ぎないように注意しながら行ってください。
Step 11: 部品の組み立て、半固定抵抗器の調整
ケースに開けた穴にジャックやスイッチなどの部品や基板を組み合わせます。LEDを固定したい場合は2液型のエポキシ系接着剤を使ってケースの中から固定してください。
また、ケースにしまってしまう前に、半固定抵抗器の抵抗値を調整する必要があります。実際にプラグを繋ぎ、ギターを鳴らしてみて音が変化するか試してください。音が鳴らないのであれば配線や基板のはんだ付けに問題があるのでテスター等で電気のつながりを確認しましょう。半固定抵抗の抵抗はDepthの抵抗と関係があるので、Depthの抵抗値を色んな値に変えてみて、半固定抵抗を+ドライバーで回して調整します。調整の目安などは特に無く、自分の聴感を頼りにして「いい感じ」のところで半固定抵抗の調整を終わってください。