Introduction: 無線で光るLED(ジュール・シーフ)

先に、単三電池で灯す蛍光灯を紹介しました。今度はもっと簡単な道具立てでLEDを点灯します。動作の基本原理は同様ですが、点灯に必要な電圧は蛍光灯よりずっと低いです(1/100程度)。感電が心配な方はこちらがお勧めです。

なお、ここで紹介する仕組みは「ジュール・シーフ(Joule Thief:エネルギー泥棒)」と呼ばれるものです。実に巧妙で感心してしまいますが、ここではLEDを無線化して彩りを添えてみます。

■紹介動画

:

ちなみに元ネタはinstructablesの英語版の記事です。ただ使用する部品が異なるので、次の2つのサイトも参照しました。

:

(ジュールシーフ、LED、無線)

Step 1: 材料(Arduinoは使いません)

使用する材料は少しです。予算は1000円以下で済むと思います。

<必要な部品>

  • LED(1個)
  • トランジスタ(1個)・・・NPN型の2SC1815を使いました
  • 抵抗(1個)・・・50Ω(~1kΩ)
  • エナメル線(5m程度)
  • 電池(1本)・・・1.5Vであれば何でもOKです

<あった方が良いもの>

  • 電池ホルダ(1個)
  • ブレッドボード(1個)
  • クリップ付きワイヤ(数本)
  • コンデンサ(1個)・・・0.1μF(上手く点灯しない時の保険です)

Step 2: 事前の確認

LEDは極性があります。電池に繋ぐ時は、足が長い方をプラス、短い方をマイナスに繋ぎます。

ただしLEDを点灯するには、ある程度の電圧が必要です。電池2本を直列(3V)にしてLEDに繋ぐとLEDは点灯します。しかし、1本(1.5V)では点灯しません(上の写真参照)

「ジュール・シーフ」を使うと、電池1本(1.5V)でLEDが点灯し、電池が消耗しても結構しぶとく光り続けます。その効果は、電池のエネルギーを「盗む」、というより「絞り取る」と言った方が良いかも知れません。

Step 3: コイルを作る(1)

ジュール・シーフは、原理的には2つのコイルを使って電池の電圧を引き上げます。しかし工作的には、コイルの途中で電線を引き出すことで1本のコイルで済ますことができます。

ここでは丸棒(巻軸)の周りにエナメル線を巻いて、この昇圧用のコイルを作ります。丸棒はボールペンなどを使うこともできますが、直径1cm以下だと、巻き終わった後の仕上げが難しくなります。できれば直径1.5cm程度の棒を勧めます

  1. 10~15cmの余裕(リード)を確保してエナメル線を巻き始める(上の1番目の絵参照)
  2. 直径1.5cm程度の丸棒にエナメル線を15回巻く
  3. 15回巻いたら、エナメル線を5cm程度引き出して折り返す(切断しない!
  4. 再度巻き始める前に、引き出し線と折り返し線(2本)を丸棒表面で2、3度ねじって位置を極める(A点)
  5. 引き出し前と同じ方向(回転方向)にさらに15回巻く
  6. 10~15cmの余裕(リード)を残してエナメル線を切る
  7. 巻き始めのリードを動かし、上記「4」のA点から、コイルを束ねるように数回巻く(2番目の絵参照)
  8. 2~3cmの余裕を残して束ね巻きを終える
  9. 巻き終わりのリードについても同様の束ね巻きを行う
  10. リード(2本)の先端、および引き出し線の折り返し部分のエナメル塗装を削る(5mm程度)

Step 4: コイルを作る(2)

普通のジュール・シーフであれば、前ステップで用意したコイルだけでOKです。ここでは、LEDのワイヤレス化を図るために、もう一つコイルを作ります。

作成方法は前ステップと基本的に同じです。違いはエナメル線の途中引き出し(前ステップの手順の3と4)を行わず、そのまま巻き続けるところです(上の絵参照)。私が試した巻き数は30回ですが、巻き数を変えて違いを見ても良いかもしれません。

Step 5: 部品を組み立てる

上の絵を見ながら、部品を組み立てて回路を作ります。この段階で使うコイルは、ステップ3で用意した引き出し線のあるものだけです。(ステップ4で用意したコイルは使いません)

用意した抵抗の値が小さければ(50Ω程度)、コンデンサを使うことなくLEDが点灯すると思います。LEDが点灯しない場合、抵抗と並列にコンデンサ(0.1μF程度)を繋いでください。

■作業動画(1):簡単なジュール・シーフを作る

Step 6: LEDの無線化

前ステップの回路からLEDを取り外し、無線で点灯させます。

  1. 上の絵のように、ステップ4で用意した2つ目のコイルを取り外したLEDに繋ぎます
  2. LEDに接続したコイル(上の絵のコイル②)を、ジュール・シーフのコイル(コイル①)に近づけます(下の動画参照)
  3. コイル②を動かすとLEDの輝度が変わることを確認します

LEDに繋ぐコイル②を机上に置き、上向きの面を表、下向きの面を裏と呼びます。このコイル②をジュール・シーフのコイル①に近づける時、表面から近づけるのと裏面から近づけるのとでは、輝度が異なると思います(下の動画の0:40~1:09参照)。

また、ジュール・シーフの回路を紙や箱で隠せば、ちょっとした手品のネタに使えるかも知れません(これも英語版のオリジナルの記事を参照しました)。


■作業動画(2):ジュール・シーフの無線化